もう、大丈夫。

なんでこんなことになったのだろう。

気がつけば倒れていた。
ああ、ダメだったか。 思わずそう思った。
ただひたすら、苦しかった。

「大丈夫ですか?」
よかった、見つけてくれた。

救急車の中。
矢継ぎ早に質問をされるけれど、声が出ない。
意識が、ゆっくりと遠のいていく。

——痛い。
激痛で意識が引き戻された。
病院に着いたのだろうか。
猛烈な吐き気に襲われ、何度も戻した。

医師と看護師が必死に処置してくれているのがわかる。
「ごめんなさい」
「ありがとう」
伝えたかったけれど、やはり声は出なかった。

喉が渇いて、目が覚める。
体中がチューブだらけだった。
手足は拘束されていて、指先すら動かせない。
天井の照明が、やけに眩しかった。

再び、喉が渇いて、目が覚める。
今は何時だろう。
ナースコールを押したくても、縛られた手足は動かない。

次は、息苦しさで、目が覚める。
自分の体なのに、どこかおかしい。

ふと、懐かしい声で目が覚めた。
ぼやける視界の先に、久々に見る顔があった。

再び、喉が渇いて、目が覚める。
もう限界だった。息ができない。
水が飲めないことが、これほどまでに苦しいとは思わなかった。
必死の思いで、看護師に訴えかける。

「ごめんね、お水は飲ませてあげられないの」
その代わりにと、凍らせた綿棒を口に含ませてくれた。
それだけで、少しだけ生き返った気がした。

「今日、明日が山場です」
どこかで声が聞こえた。
この苦痛はまだ続くのか。
ぼんやりとそう思った。

「回復に向かっていますよ」
そっか、生き延びたか。そう思った。

ふっと体が楽になって、目が覚める。
「お名前、言えますか?」
「ここがどこか、わかりますか?」
かすれた声で、ゆっくりと答える。

「……もう、大丈夫ですね」

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